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派遣法についての具体例

トップページ » 派遣法についての具体例

2017年6月29日

簡単に言えば、期間1年間の有期雇用の派遣労働者Aさんが、
派遣先Y社にて3年間を経過しても経理課という同一の部署で
同一の派遣労働をしていたため、派遣先による直接雇用のみなし制度が
適用され、さらに2年経過して通算5年以上経過したので、
Aさんが有期雇用の無期転換を申し出たという内容です。

1、この例では、Aさんは、3年間を超えて同一の職場で
派遣労働をしています。
今回の改正派遣法では、有期雇用派遣の派遣期間について、
二つの期間制限が設けられました。

第一が事業所単位での派遣期間制限で、3年という
しばりがあります(40条の2第1項、2項)。
ただしその事業所の過半数労働組合等への意見聴取があれば、
3年を超えてその派遣労働者を受け入れることが
できます(40条の2第3項、4項)。

第二に個人単位での期間制限があります。これによれば同一の組織単位での
派遣就業は3年間に制限されています(35条の3)。
同一の組織単位というのは、いわゆる「課」単位と言い換えてもよく、
「課」を異にすれば3年間を超えて派遣就業ができます。

本設例の場合、第一の事業所単位の期間制限について過半数労働組合等の
意見徴収があったか否かは不明ですが、第二の個人単位での
期間制限については、3年間を超えて同一の「課」である「経理課」で
同一の仕事をしていますので、明らかに派遣期間制限を超えています。
まさに派遣法違反です(40条の3)。

2、派遣法違反があると、当然、派遣先には行政処分や罰則などの
不利益が課されます。
しかし、ことはそれでは終わりません。派遣法違反は好ましくない状況
なので改善する必要があります。しかしながら、だからといって
派遣契約自体を解消すると派遣労働者も職を失ってしまいます。
そこで編み出されたのが、違法派遣の場合における、
派遣先による派遣労働者に対する直接雇用の申込みみなし制度です
(平成24年改正法で創設され、同27年10月から施行されています)。

これは、「ある特定の派遣法違反がある派遣労働等を受け入れている場合で」、
「派遣先がその違反があることを知らず、あるいは知らなかった
ことについて過失がないことを証明できない限り」、
「派遣先が、派遣労働者に対して、自社で雇用する旨の直接雇用の申込みを
したとみなす」
という制度です。

「みなす」というのは、「そうでないものをそうであるものとして扱う」
という意味です。本制度でいえば、派遣先としては、派遣労働者に対して
自社で直接雇用する旨の申込みなど決してしていないにもかかわらず、
いわば強引に、「申込みをした」としてしまうのです。
(「みなす」の意味については、こちらをご参照ください)
契約は申込みとそれに対する承諾で成立しますから、派遣労働者が、
「うん」といえば、派遣先との間で直接雇用が成立することになります。

効果が強く論点も多い制度ですが、簡単にポイントを押さえましょう。
まず、対象となる違反行為ですが、以下の5つの種類があります。
(1)派遣禁止業務に派遣労働者を受け入れる場合
 派遣禁止業務はもうご存知ですね?
(2)無許可事業主から派遣労働者を受け入れる場合
(3)事業所単位の期間制限に反して派遣労働者を受け入れる場合
 期間延長の適正な手続きが履践されていればOKです。
(4)個人単位の期間制限に反して派遣労働者を受け入れる場合
 今回の設例で示したケースです。
(5)いわゆる偽装請負の場合

次に、ここで成立する直接雇用の内容は派遣元事業主との
労働契約と同一の条件になるのが原則となります。
今回の設例では、派遣労働者Aさんの契約は1年間の期間の定めが
ありますので、派遣先との間で成立する直接契約も
1年間の有期労働契約となります。

さて、申込みがあったとみなされ、それに派遣労働者の承諾がなされると、
直接雇用契約が成立してしまいます。これは派遣先にとっては
負担になりえます。もしも違法であることを知らなかったときまで
このような不利益を課すのはかわいそうです。

そこで、この制度に関しては派遣先について主観的要件を求めます。
すなわち、派遣先が、違反であることを知らず、そのことについて
過失がなかったこと(このようなことを法律用語で「善意無過失」と
いいます)を証明できれば、申込みみなしは適用されません。
これを立証する責任は派遣先にあります。
(善意無過失については、こちら
また、立証責任については、こちらをご参照ください)

ちなみに、「すみません、不勉強で改正法について知りませんでした。
ごめんなさい」というのは、「知らなかった」ということには
該当しませんのでご注意を。

以上書いてきたことをまとめますと、まず今回の派遣労働に関しては、
少なくとも個人単位での派遣期間制限違反があり、
それを知っていた派遣先に対しては、派遣労働者に対する
直接雇用みなし制度が適用されるので、
派遣労働者が承諾しさえすれば、派遣先との間で直接雇用契約が
成立し、その内容は従前と同一の1年間の有期労働契約である、
ということになります。


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